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高松高等裁判所 平成8年(ラ)21号 決定

抗告人(免責申立人)

甲野佳子

甲野正子

右両名代理人弁護士

籠池宗平

松浦明治

主文

一  本件抗告をいずれも棄却する。

二  抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状の写しに記載のとおりである。

二  当裁判所も、抗告人らによる本件免責の申立ては不適法であると判断する。その理由は、次のとおりである。

高松地方裁判所丸亀支部平成六年(フ)第五三号破産申立事件記録によれば、同裁判所で、甲野花子は、平成七年三月二日午前一〇時に破産宣告を受けた後、同年四月一一日に死亡したが、その相続財産につき破産手続が続行され、同年九月一九日、破産廃止の決定がなされ、右破産手続は終結したことが認められる。そして、本件免責申立事件記録によれば、抗告人らは、いずれも甲野花子の子であることが認められる。

ところで、破産宣告後に破産者が死亡した場合には、その相続財産(ただし、破産宣告後の新得財産を除く。)につき破産手続が続行されることになるところ、破産者の相続人は、破産法三三条に則り、破産者に対して有する債権につき相続債権者と同一の権利を有する者として、破産債権者たり得ることに照らすと、破産者の相続人を右破産手続の承継人とみることはできず、相続財産自体を右破産手続の当事者(破産者)とみ、法人格なき財団に破産能力を認めるのを相当とする。してみれば、破産者の相続人が右破産手続の当事者であったことを前提に、免責の申立てをする余地はないというほかはない(ちなみに、破産者の相続人は、限定承認や相続放棄をすることにより、相続債権者が相続人の固有財産に対して権利を行使するのを阻止すべきである。)。

三  したがって、原決定の結論は相当であって、本件抗告はいずれも理由がないから、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 裁判官 奥田正昭)

別紙抗告の理由

一、前記決定に対する抗告理由は次のとおりである。

二、原審は、免責申立権が一身専属権であるとして、相続人に免責申立権はないと言うが、そのように解する法律上の根拠はない。

三、相続人は、被相続人の地位を包括的に承継するものであるから被相続人の破産者たる地位を承継するものとして、破産者が、免責申立前に死亡した場合には、その免責申立権者たる地位も継承すると解すべきである。

四、破産者死亡の場合、相続財産につき免責を認める必要が存するから、相続人に免責の規定の類推適用を認めるべきである(清林書院注解破産法〔改訂第二版〕七二三〜七二四頁)。

なお詳細は追って準備書面をもって陳述する。

五、そこで申立の趣旨記載の裁判を求めるためこの申立をします。

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